金属が錆びて朽ちていくことを腐食と言います。
この腐食の進行を止めたり遅らせたりすることを防食と言います。
金属の腐食は、金属の表面に生じる酸化反応によって材質が酸化したものに置き換わって朽ちていき、断面が減少していきます。防食を施すことによって腐食の進行を止めたりできます。
塗装による防食
防食の方法で最も広く用いられているのは、塗装です。
金属の表面に塗料を複数の層に分けて塗り重ねることによって金属が酸素と触れることを防ぎます。
この塗装を施工する際に、金属表面にすでに腐食が認められる場合は、その部分を綺麗に除去しておかないと塗料によって形成された塗膜が、浮き上がったり剥がれたりしてしまいます。
このため、塗装の施工では金属表面の清掃作業が重要となります。
塗料の種類については、金属の種類や設置されている環境によって最適な塗料が決まってくることから、適切なものを選定するようにします。
塗装には耐用年数があり、確実な防食効果を発揮させるためには定期的に塗り替えが必要になります。
水中での防食方法
重防食
塗装に関連した防食方法として、桟橋や岸壁等の海洋構造物に用いられている金属製の構造物は、水中では電気防食と呼ばれる方法によって腐食から守られています。
しかし、最も厳しい腐食環境は常時水中にいることができない上に飛沫が付着する干満帯です。
この部分に対する防食の技術として重防食があります。
これは、鋼矢板や鋼管などを製造するときに干満帯にあたる部分に被覆を取り付けるものです。
被覆材にはペトロタラム系のものが多く用いられています。
金属の表面を清掃し素地を出してその上にペトロタラム系の防食材を被せます。
更にその上に、緩衝材とカバーを取り付けて港湾などで飛沫だけでなく、流木などの衝突からも構造物を守っていけるようにします。
犠牲防食
防食の方法で他には犠牲防食があります。犠牲防食の原理は、金属が電子を失って陽イオンになろうとする傾向(イオン化傾向と言います)が、本体の金属よりも強い金属で表面を覆うことによって防食するもの。
傷がついて本体金属が露出したとしても、表面にある別の金属が先にイオン化して溶け出すことで本体金属の腐食を防ぎます。
一般的にメッキと言われる工法が該当します。メッキで最も有名なものは鉄に亜鉛をメッキしたものです。
トタン板や道路標識等の柱で金属の光沢があるものには亜鉛メッキが用いられています。
最近の水道管には製造過程でこのメッキにあたる塗装を施してあるものも開発されています。
電気防食
その他の防食方法としては、電気防食があります。
これは、地中の水道管などが電車の線路を横切って埋設されている箇所で、水道管の周囲に電位が存在することによって腐食が進行する環境となるため、電位を変化させることによって防食を行うものです。
電気防食で一般的に用いられているのは、金属の電位を不活性な値まで下げる方法で、カソード防食と言われています。
具体的な方法は流電陽極式があって、本体金属にそれよりも電位が小さい金属をケーブルなどで電気的に接続し、この2種類の金属の間の電位差を利用して電流を流すことによって防食を行います。
接続する金属のことを陽極と言います。陽極に適している金属は試用期間中に有効な電位差を継続でき、発生する電気量が大きくて溶け出しが均一なものが良いとされています。
亜鉛、マグネシウム、アルミニウムが実用化されており、マグネシウムが最も多く用いられています。
陽極が地中で電気を流しやすいように接地抵抗を下げる目的で陽極の周りを充填材で埋め戻します。
陽極の耐用年数は一般的に30年程度と言われており、定期的に更新することで防食効果を持続させることができます。