電気防食装置は鋼管の腐食を防止する目的で使用する設備です。鋼管の腐食による事故の発生を防ぐ目的で設置されています。電気防食装置はどのような方法で腐食を防止しているのでしょうか。この記事では電気防食装置の原理と方法を紹介します。
電気防食装置の原理
電気防食装置が腐食を防止する原理だと理解するには腐食がどのような現象なのかを知る必要があります。ここでは腐食の内容と防食の原理を合わせて解説します。
腐食とは
腐食とは金属が化学的反応または電気化学反応によって消耗する現象です。化学的腐食では金属が空気中の酸素により酸化されて腐食されます。乾いた空気中で熱にさらされたときに金属表面が錆びてもろくなる現象が化学的腐食の典型例です。
一方、電気防食が適用される電気化学的腐食では水に含まれる電解質の影響によって金属が溶け出します。電気化学的腐食の場合には二種類の異なる金属が電解質を含む水に触れているときに、二つの金属が電極になることで電池と同じ状況ができるのが原因で起こります。
溶けやすい金属が陽極、溶けにくい金属が陰極となり、電流の流れる回路ができることで次第に陽極から金属が溶け出していくという仕組みです。
防食の基本原理
防食は電気化学的腐食が起こる原理に抗うような仕組みを設備として取り付けて、金属が表面から溶け出すことを防止します。電気化学的腐食を防ぐ方法には二通りあります。
一つは鋼管に使用している鉄などの金属よりも溶けやすい電極を接続する方法です。これによって水を介した回路ができる際に鋼管よりも溶けやすい金属が先に腐食されていきます。
もう一つは直流電流を腐食する方向とは逆向きに流すことによって防食する方法です。電気化学的腐食ではよりエネルギー的に安定になるよう金属が溶けていきます。外部から電気的にエネルギーを加えて逆向きの電流の流れを作り、相殺すれば金属が溶ける現象を妨げることが可能です。
電気防食装置ではこの二つの方法を活用して鋼管の腐食を防止しています。
電気防食装置の種類と腐食を防止する二つの方法の特徴
二つの防食方法に対応する電気防食装置が実際に利用されています。ここでは二種類の電気防食装置について特徴を紹介します。
流電陽極方式
流電陽極方式とは溶けやすい金属を回路の中に接続して防食する方法です。流電陽極や犠牲陽極と呼ばれるアルミニウムやマグネシウムなどが用いられています。流電陽極方式は流電陽極として導入している金属が溶解して減っていくため、定期的な交換が必要です。小規模な防食に有効で、メンテナンスをしていれば安定した防食をおこなえる特徴があります。
外部電源方式
外部電源方式は電源設備を用意して直流電流を流すことで防食する装置です。直流電源装置を耐久性電極に接続して陰極とし、防食したい鋼管を陽極にする形で電流を流します。
この防食電流によって電気化学的腐食を抑制するのが外部電源方式の特徴です。外部電源方式は外部に電源装置を設置できるスペースが要求されますが、大規模な施設でも電力供給だけで腐食を防げるメリットがあります。電極の交換もほとんど必要ないのでメンテナンスの負担が小さいことも特徴です。
ただ、常に通電する仕組みなので維持コストが大きいのが外部電源方式のデメリットです。
まとめ
電気防食装置には流電陽極方式と外部電源方式の二種類があり、異なる原理で腐食を防止しています。維持の負担や設備の要件に違いがあるので、現場に合わせた選択が必要です。鋼管などの腐食を防ぐ装置を取り入れる必要があるときには、今後のメンテナンスや維持費も含めて考えて、合理的な方を選びましょう。