金属を扱ううえで、知っておきたいポイントの一つに金属の錆があります。
基本的に錆があると金属の耐久性は低下して破損の原因となったり、部品の可動性が低下するといった状態になることも少なくありません。
そんな錆を防ぐための処理として、防食性を加えたものと防錆性を加えたものがあります。
しかし、それらの違いをあいまいに理解している方も少なくありません。
そこで今回は、防錆性と防食性の違いについて解説し、どのような処理がされているのかについても解説します。
防食性(耐食性)と防錆性との違いは?
結論をいえば、防錆性も防食性も同じ意味です。
厳密にいえば、防錆は錆に耐えることに特化した性能なのに対し、防食性は腐食に耐える性質になり、防食性の方が比較的広い意味を示します。
ただ、金属において防食性があるということは、金属のさびが広がることを防ぐ性質と同義になることから、同じ意味になるといえるのです。
では、防食性と防錆性とはどのような性能なのか、より具体的に説明していくと、腐食(錆)の進行速度の違いを指します。
防食性や防錆性が高ければ高いほど、錆が発生しにくくなり、発生してもその進行は緩やかです。
防食性や耐食性の高い金属は、錆が発生しにくく、錆が進みにくいといえ、物質的に安定しているものになります。
物質的に安定していることで反応が起こりにくく、水分に触れても酸化還元反応によって発生する錆が起きにくいのです。
防食性や防錆性が高い金属素材とは?
具体的に防食性や防錆性が高い金属としてあげられるのが金やプラチナ、そしてステンレスです。
ただし、金とプラチナに対してステンレスは異なった性質により、防食性や防錆性が高い金属としてふるまっています。
まず、金やプラチナは物質そのものが安定しているため酸化還元反応によって錆が発生しにくい性質を持っています。
これによって防食性や防錆性が高い金属として存在しているのです。
一方、ステンレスは例外的な存在であり、ステンレスの表面に酸化皮膜(不働態被膜)を持っていることで安定しているのが特徴です。
酸化被膜とは、物質のイオンが酸化物になって金属の表面全体に広がっている膜のことを言います。
ステンレスは緻密な酸化被膜がすでに存在していることで、酸化還元反応から自身を守る構造なのです。
これによって高い防食性や防錆性を獲得しています。
このように金やプラチナが自身の安定性で防食性や防錆性を持っているのに対し、ステンレスは自身の周りを安定した酸化被膜によって守ることで安定性を獲得しているといえるでしょう。
ちなみにステンレスの仲間としてハステロイ(クロム、モリブデンを配合したニッケル合金)があり、こちらも酸化被膜で高い防食性や防錆性を持っています。
メッキと防食・防錆の関係について
金属の加工手法の一つにメッキがあります。
これは特定の金属(鉄など)に対して、比較的防食性や防錆性を持っている亜鉛などの金属をコーティングする技術です。
本来は防錆性や防食性の低い鉄などの金属に、高い防食性や防錆性を持足せることが可能です。
ただし、メッキの技術が未熟だとコーティングしていない部分から腐食が始まることもあります。
そのため、メッキには精度の高い技術が求められます。
また、メッキの被膜の構造を改良、さらにメッキの上に安定した成分である塗料や追加の防錆処理を施すことで性能を高めることも可能です。
まとめ
防食性と防錆性は金属において同じ意味を持つ言葉です。
さまざまな環境で発生する錆を防ぎ、発生を遅らせる能力を指します。
金やプラチナのように自身が高い防食性や防錆性を持つものやステンレスのように被膜を持っているもの、さらにメッキなどの表面処理で能力を獲得したものがあります。