住宅や塀、駐車場、倉庫などの建造物によく使われる材料に「鉄」があります。
鉄は安価で、且つ強度や加工性に優れていますが、「腐食」という問題が付きまといます。
そこで、鉄の表面に施される処置が「防食」です。防食といっても、使用環境によって適応する方法が異なります。
●防食の意味
防食を簡単に言うと、腐食を防ぐという意味です。
その腐食とは、金属が化学反応によって外見や機能が損われた状態を意味しています。
一番分かりやすいのが、サビです。鉄に腐食が起きる根本的な原因は水分と酸素の存在です。
鉄の場合、表面に付着した水分が鉄をイオン化し、空気中の酸素と反応して酸化鉄を生成するようになります。
この酸化鉄がサビになります。従って、防食の目的には以下の2つが挙げられます。
・鉄が酸素や水分と触れないようにする。
・鉄がイオン化しないようにする。
●防食方法
金属を腐食から守る防食方法には以下の3つがあります。
1)被覆防食
被覆防食の意味は、金属の表面を被覆することで金属が酸素や水分と触れるのを防ぐことです。
その方法には以下があります。
①塗装
防錆顔料や着色顔料などを金属に塗る方法のことであり、要するにペンキ塗りです。
不動態皮膜を形成したり、酸素・水分・塩分などを遮断したりする働きをします。
費用が安く済みますが、塗り直しなどでランニングコストがかかります。
また、天候の変化に弱く、物理的な耐久性も劣ります。
②金属被覆
表面に金属皮膜を形成する方法で、代表的なものにメッキや金属溶射があります。
鋼板に亜鉛メッキすると「トタン」、スズメッキすると「ブリキ」と呼ばれます。
一方、金属溶射は鉄よりイオン化傾向の高い金属を溶解して吹き付けることで被膜を形成します。
亜鉛やアルミニウムによる溶射がよく使用されています。
金属皮膜はランニングコストを抑えられますが、初期費用が高くなります。
③無機被覆
金属や無機物質といった無機材料を溶射・焼付け・張合わせなどの方法で金属表面に覆います。
代表的なものにモルタルがありますが、現地での施工に限定されるため、費用が高額になります。
④有機被覆
樹脂やゴムといった有機素材を溶射・焼付け・張合わせなどの方法で金属表面に覆います。
特に、安価なポリエチレンが材料としてよく使用されています。
2)電気防食
電気防食は金属に電極を接続し、電気を流して金属の電位を
イオン化が起きない水準まで変化させることを目的としています。
つまり、イオン化を防げば、腐食を防げることを意味します。
電気防食は主に、被覆防食の処置が難しい環境にある場合に行われます。
電気防食には以下の2つの方法があります。
①流電陽極法(犠牲陽極法)
鉄よりもイオン化傾向の高い亜鉛やアルミニウムなどを電線で接続することで防食を行います。
外部電源を必要としないことで、利用しやすくなっています。
被覆防食よりも防食性能は良くなりますが、費用が高く付きます。
②外部電源法
耐久性電極を使用して外部から直接電流を流します。デメリットとして、
外部電源の必要になることが挙げられますが、長期で利用できるというメリットも備わっています。
3)耐食材料
耐食材料は金属に添加物を加えて不動態皮膜を形成させることが目的になっています。
鉄の耐食材料として代表的なものにステンレス鋼があります。
ステンレス鋼は鉄合金の中のクロムが不動態皮膜を形成する働きをしています。
その他、ニッケルやモリブデンを含むステンレス鋼は耐食性がさらにアップします。
費用は高くなりますが、腐食の心配が無くなります。
●まとめ
鉄の防食のポイントを列記すると以下になります。
・防食その①:金属が酸素や水分と触れないようにする。
・防食その②:金属がイオン化しないようにする。
・防食方法には被覆防食、電気防食、耐食材料の3つがある。
・防食方法によって、初期費用やランニングコストが変わる。