日本の美しい建築物に欠かせないのが、「左官」と呼ばれる職人さんたちの仕事です。
建築物の壁や床をより美しく仕上げるために、絶対になくてはならない仕事を担っています。
左官と聞いても、それがどんな職種なのかいまいちピンとこない人も多いかも知れません。
ですがその姿は、誰もが1度は建築現場や工事現場などで見かけたことがある職人さんと言っても、過言ではないでしょう。
そんな「左官」とは、いったいどんな仕事をこなしている職人さんたちなのでしょうか。
①<左官とはどんな人?>
左官とは、鏝(こて)と呼ばれる道具を駆使し、建築物の壁や床をきれいに塗り上げていく技術を持った人たちのことです。
壁や床にいろいろな素材を塗り付けていく作業を見れば、一見簡単な作業のように見えるかもしれません。
ですが、そうではないのが左官の仕事です。
塗り壁に使う資材によってはすぐに固まってしまうものや、壁の下地と馴染みにくいものもあり、
これらの素材の特性を把握したうえで、均等に塗り込んでいく作業は高度な技術を要します。
特に漆喰を使った作業は、多種多様な塗り方ができる点から、左官の腕が光る作業です。
その他、壁にタイルを貼ったり、ブロックやレンガを積む作業も、左官の仕事として知られています。
②<左官とはどんな仕事をする?>
左官とは、一言でいうと「塗り」の作業を専門とする仕事です。
大工さんとの違いが、どこにあるのか疑問に思う人も少なくないでしょう。
大工さんが建築物の根幹となる構造そのものを作り上げていくのに対し、
左官は塗りの作業を基本として、建築物を仕上げていく仕事をします。
左官の命ともいえる鏝(こて)を、塗る資材の特性や作業内容に合わせて、
使い分けながら作業するのも左官の仕事の特徴です。
モルタルと呼ばれる資材を使う時には「中塗り鏝」、一般的な壁を仕上げていく時には「仕上げ鏝」を使います。
そのほかにも、「レンガ鏝」や「目地鏝」など様々なタイプの鏝を使い分け、建築物を美しく仕上げていくのです。
③<左官とは資格が必要な職種?>
左官とは、特別な資格を必要としているわけではありません。
ですが、ある程度の技術力や能力を示すものとして、国家技能検定が実施されています。
それは「左官技能士」と呼ばれる国家資格であり、1級と2級に別れています。
ですが、資格が不要とは言え、誰でも簡単に左官になれるというわけではありません。
見た目以上に高度な技術が必要とされるため、弟子として地道に修業を重ねることで、
ようやく一人前の左官になることができるのです。そこにたどり着くまでに、およそ10年の年月が必要だと言われています。
また左官とは、その入り口は比較的広く開かれた職種でもあります。
前述したように、特別な資格は要しないため、左官業務を行っている工務店や、建設業に就職することでなれる職種です。
未経験者でも求人に応募することは可能ですが、まずは見習いとして弟子入りすることから始まります。
資格や学歴にこだわらず採用する会社も多いため、やる気のある人であれば、誰でも左官になることができるのです。
ですが、一人前となるまでおおよそ10年もの月日を要することからわかるように、その道は決して平らではありません。
何でも根気強く続けられる人、やる気に満ち溢れている人、
建築物に携わることを目標としている人ほど、向いている職種です。
<まとめ>
左官とは、その仕事内容を見れば一見簡単な仕事内容に見えることもあるかもしれません。
ですが、鏝を駆使して資材を壁や床に塗るという工程は想像以上に難しく、
美しく仕上げるにはかなりの技術を必要とします。
その左官の仕事がなければ、美しい建築物が完成することはありません。
長年の修業と経験を地道に積み重ねることで、その腕は確実に磨き上げられていきます。
左官とは、建築物を完成させるための最も重要な「最後の工程」を担った職人さんたちなのです。